こんにちは。院長の浦野です。
おかげさまで開院して1年が経ちました。あっという間の1年でしたが、少しでも皆様の力になれるよう今後も頑張りますので、よろしくお願いします。
さて、今回は春から活動が活発化するマダニについて書いてみたいと思います。
読みたいところだけでも結構です。ご興味ある方はぜひ読んでみてください。
マダニの多い季節は?
マダニが最も多い季節はいつかご存じでしょうか?
意外と知られていないかもしれませんが、正解は秋(9~10月)です。
下の図にあるように、個体数のピークは春と秋の2峰性を示します。
春は成ダニ・若ダニが中心となり、秋は卵から孵化した幼ダニが中心に増加します。
フタトゲチマダニが数として圧倒的に多いですが、冬場は落ち葉の下などに隠れて越冬するため刺されることはほぼなくなります。春先の活動開始は来院の状況をみると3月からのようです。
ただし、キチマダニは通年活動しているため、数は減りますが冬場でも刺されるケースがあり注意が必要です。

マダニはどこにいるの?マダニの一生とは??
マダニはどのような生活を送っているのでしょう?
マダニは吸血と脱皮を繰り返し、成ダニになると、雌は卵を産み一生を終えます。
血を吸って大きく膨らんだ状態を飽血(ほうけつ)状態といいますが、大抵はこの飽血時に体についたダニに気づき、来院されるケースが多いです。
さて、マダニはどこにいるのでしょうか?
基本的には公園や河川敷、野山の草むらにいて、動物が通りがかるのを待ち伏せしています。
マダニ自体に移動能力はほぼなく、動物に寄生し移動します。そして飽血して落下すると、その場でまた動物が通りがかるのを待ち伏せします。
つまり、吸血対象の動物(いわゆる野生動物)がたくさん通る場所にはマダニもたくさんいる可能性があるということになります。
お主な動物はネズミ、ウサギ、イタチ、タヌキ、キツネ、イノシシ、シカなどです。

※参考文献:「マダニの生物学」動薬研究 1998 5 vol.57
マダニを介して移る病気は?
ダニを介して感染する病気は犬猫だけではなく、人の病気もたくさんあります。代表的なものを挙げてみます。
バベシア症:犬
血液の赤血球に寄生する寄生虫疾患です。寄生された赤血球が壊れる(溶血)と貧血や黄疸が認められます。その他発熱や食欲不振なども認められます。
西日本での発生が主となります。旅行に行かれる際は対策が必要です。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS):犬・猫・人
日本では2012年に初めて人体感染例が確認されたウイルス病で、人では致死的な出血熱を起こします。
猫でも急性の発熱、食欲不振、黄疸、白血球や血小板減少が認められ、発症した猫の約60%が7日以内に死亡するとされています。猫・人で特に感受性が高く、感染すると重篤化する傾向があります。
マダニ駆除薬を投与した猫でも発症した例があり、ダニに刺されないようにする、刺される前に取り除くことが重要になりそうです。
長野県でもウイルスを保有したマダニが確認されていますが、人の感染報告は今のところありません。
日本紅斑熱:人
リケッチアという病原体の感染により発症します。発熱や全身の発疹などの症状を起こします。場合により死亡するケースもあります。長野県での発生報告があります。
ライム病:人
細菌の感染により発症します。紅斑や皮膚炎などの皮膚症状や、関節痛や神経症状など様々な症状を引き起こします。長野県での発生報告があります。
マダニへの対応
では、具体的にマダニへの対応はどのようにすればよいでしょうか。
最も重要なことは刺されないようにすることです。
これが今回、最もお伝えしたかったことです。薬の投薬はもちろん重要ですが、それだけでは不十分です。まずは、刺されないように注意しましょう!!
マダニ駆除薬を投薬していても刺されますし、吸血もされますので、病気の予防ということを考えると100%ではないからです。
刺される前の対処法
①マダニがいそうなところは避ける。
当たり前ではありますが、マダニがいないところをなるべく選んで散歩することは重要です。避けれるものであれば避けましょう。
②洋服を着させる。
皮膚の露出を減らし、刺されにくくする効果が期待できます。ただし、刺されやすい場所は、顔周りや四肢が多く、そこまでカバーすることが難しいため効果は限定的です。
③散歩をした後、マダニがいないかチェックする。ブラッシングをする。
マダニがついてしまった場合でも、刺される前であれば簡単に除去することができます。ダニがつきやすい場所がありますので、念入りに毛をわけながらチェックし、いたら取り除きましょう。ガムテープなどにくっつけてしまうのがおすすめです。
特に顔周り、四肢、脇あたりについているのをみますので、よくみてあげてください。
それから、必ずお家に入る前に外で行いましょう。
③マダニ駆除薬を投薬する
多くの薬が1回の投薬で1か月間、駆除効果が得られます。早いものだと投与して8時間程度、遅いものでも48時間程度でほとんどのダニに対して駆除効果を発揮し、それが1か月つづきます。
問題は吸血されて薬がダニの体内へ入らないと効果が発揮されないことです。つまり、必ず刺されます。ここを勘違いされている方が多いです。
病気の感染に関していうと、吸血されてから、病原体が犬や猫の体内へ入っていくまでには時間差があるといわれています(例:バベシアは吸血されてから36~54時間後)が、詳しいことはわかっていないのが現状です。
したがって、マダニ駆除薬を投薬しているから大丈夫!というのは今のところ間違いです。
刺されてしまったら、、、
とはいえ、刺されてしまうこともあります。その場合は以下のように対応してください。
①引っ張らない、潰さない。
無理に引っ張って取ろうとすると、口の一部が取れて皮膚に残ってしまうことがあります。その場合後に皮膚が炎症を起こし腫れたり、腫瘤をつくる原因になります。
また、潰してしまうとマダニの体内にいる病原体を撒き散らすリスクとなりますので、大変危険です。
基本的には見つけ次第、病院を受診し、除去してもらいましょう。
②自宅でマダニ除去をしたい場合
無理に引っ張るとよくありませんが、クルクル回してとるとキレイに取れることが多いです。自宅でとりたいという場合は、マダニを取る器具が販売されていますので、そちらを使用することをおすすめします。
いかがでしょうか?
今回伝えたかったことは、薬をやっていれば大丈夫!ではないということです。
とにかく刺されないための努力をおねがいします!!