こんにちは。院長の浦野です。
今回は前回に引き続き猫のワクチンについて、接種回数や接種間隔についてお話ししてみようと思います。
ワクチン接種の方法は考え方が様々ありますので、これが正解ということではありませんが、一つの参考にしていただければと思います。
今回も世界小動物獣医師会(WSAVA)のワクチンプログラムをもとに解説してみたいと思います。
- 移行抗体を理解しよう
- 2歳までのワクチン接種
- 2歳以上のワクチン接種
1.移行抗体を理解しよう
初回のワクチン接種を理解するうえで、重要なキーワードがあります。
それは移行抗体(母親由来の抗体)です。
生まれたばかりの動物は、病原体からの防御能力や免疫力が十分に発達していません。そのため、自己の免疫機能が発達するまでの間、感染から体を守るため、母親から抗体を譲り受けるという仕組みが備わっています。
移行抗体は生後8~12週齢までに徐々に消失しなくなるといわれています。まれにそれ以降も移行抗体がある場合もあるそうですが、16週齢を過ぎると、ほとんどの個体で移行抗体は完全に消失し、自己の免疫へ切り替わるとされています。
さて、なぜこの移行抗体が重要なのかというと、移行抗体が十分ある間はワクチンの効果が発揮されないからです。
ワクチンとは弱毒化した病原体やその一部を体に接種することにより、自己の免疫を育てることを目的としています。しかし、移行抗体があるうちは、母親からの抗体で守られているため、ワクチン接種をしても自己の免疫機構は育ちません。
つまり、移行抗体が少なくなったタイミングでワクチン接種をしないと効果がないということになります。しかし、移行抗体がなくなるタイミングは個体により様々で、予測することは不可能です。
したがって、定期的なワクチン接種を行いながらどこかで反応してくれればという方法でワクチン接種を行っていきます。
②0歳~2歳までのワクチン接種(WSAVA推奨)
WSAVAガイドラインでは6~8週齢で初回ワクチン接種を行い、16週齢を過ぎるまで、2~4週間隔で接種を継続していきます。その後、26週~52週齢で1回再接種を行うことを推奨しています。
ここで大事なのは接種した回数ではなく、最終の接種時期です(図2)。16週齢を越えて1回ワクチンが接種されていることが大切です。
また26週〜52週での追加接種を推奨する理由としては、16週齢のワクチン接種に反応しなかった個体に対して、なるべく早期にワクチン接種を行い、リスクを減らすためとしています(図3)。
②0歳~2歳までのワクチン接種(当院推奨)
当院ではWSAVAの考え方を元にしたワクチン接種を推奨しています。しかし、2週間間隔でのワクチン接種は接種回数が多いため理解が得難く、難しいと感じております。したがって、以下のように少し簡略化しわかりやすい接種を提案しています。
8週齢からワクチンを開始し、4週間隔(1か月間隔)で3回の接種を推奨。その後は最終接種から1年で追加接種としています。
②2歳以上のワクチン接種(WSAVA推奨)
コアワクチン
低リスク:3年に1回(毎年の追加接種を行わなくても、何年も免疫が持続するため)
高リスク:1年に1回
低リスクとは、完全室内飼育かつ単頭飼育でペットホテルに預けることもないもの。それ以外を高リスクとする。
ノンコアワクチン:1年に1回
16週齢まで接種したが、その後接種していない:1回の追加接種
接種歴不明:2〜4週間隔で2回接種
②2歳以上のワクチン接種(当院推奨)
5種混合ワクチン:1年に1回
16週齢まで接種したが、その後接種していない:1回の追加接種(3種or5種)
接種歴不明:4週間隔で2回接種(3種or5種)
今回は以上になります。少し難しい話しになってしまいましたが、少しでもお役に立てれば幸いです。
わからないことがあれば、気軽にご相談ください。